大学卒業後、写真家を目指す
栗原徹だったが、サーカス団
員の写真を撮り続けるうちに
命がけの芸に生きるサーカス
そのものの魅力に取りつかれ
「キグレサーカス」に入団す
ることになった。
入団３年目で栗原は海外で
「クラウン」と称される、笑
いだけではなく、豊かな表現
力と高度な芸で観客を魅了す
る一流のピエロを目標とし、
パントマイムやアクロバット
の技術を身に着ける。
そしてさらに危険な「高綱渡
り」にも挑み、ショーの流れ
を変える存在のトップスター
になっていった。
その陰には他の団員他の芸人
が寝静まった夜中にもメーキ
ャップを施し、鏡の前で稽古
に励むという不眠不休の努力
があった。
道化師のソネット
１９８０年
さだまさし
作詞：さだまさし
作曲：さだまさし
『翔べイカロスの翼』主題歌
道化師のソネット さだまさし
ファンサービスを惜しまない
栗原は、しだいに「ピエロの
クリちゃん」として子供たち
の人気者になってゆく。
「ピエロのクリちゃん」は、
綱渡りのクライマックスで、
「綱渡りの綱の中央で椅子に
座り、ポーズをとってみせる」
という高難度の芸を披露、終
わってゴールに戻ろうとした
とき、テント上部の通気口か
ら突風が吹き出しバランスを
失った栗原は落下する。
最も危険な場面を終えたため
防護ネットは回収され始めて
おり、団員たちは慌ててネッ
トを引き戻したが、瞬時の差
で間に合わず、栗原はステー
ジ床に叩きつけられた。
まさかの突風だった。
瀕死の重傷を負った栗原は言っ
た、
「道化師は子どもたちに夢を与
える仕事なのだから、自分が
死んだらそのことを子どもた
ちには知らせないでほしい」
と。
